冬の雨に誘われて

朝、カーテンを開けたら、
しとしとと雨が降っていた。
冬のあいだ、
どこか張りつめていた空気が
雨とともに少し緩んだような気がする。

そんな雨音に誘われて、
久しぶりに近所のカフェまで歩いてみた。
コートの襟を立ててもまだ冷たさが肌にしみる。
道ばたの木々はまだ裸のままだけれど、
雨に濡れて枝先がわずかに光っている。
カフェの窓際に座ると、
外では小さな子どもたちが
傘をさしながら水たまりではしゃいでいた。
冬の終わりが近づいているのかもしれない。

冬はどうしても、家にこもりがちだった。
外に出ても、足早に目的地へ向かうばかりで、
景色を楽しむ余裕なんてほとんどなかった。
でも、冬の雨に濡れる街を歩くと、
不思議と心がほどけていくような気がする。
立ち止まって雨のにおいを感じたり、
雨がアスファルトに
優しく当たる音に耳をすましたり。
そんな小さなことに幸せを感じられるんだと
あらためて思った。

寒さがまだ続くけれど、
気持ちだけでも少しずつ
春に向かって準備をしていきたい。
おしゃれなカフェを見つけてみたり、
気になっていた本を手に取ったり。
何かを変えるのは大げさすぎるけれど、
ほんの少しだけ日常に新しい風を入れてみる。
そんなことが、この季節の楽しみなのかもしれない。

家に帰って、窓を開ける。
冷たい空気が、カーテンをやさしく揺らした。
これから少しずつ、季節が動いていく。

今日も、みなさんの人生が輝きますように。